発音学習 |
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応用トレーニング@ 音読
前のステップの最後にも述べたように、ここから先は応用的な発音練習で、よりネイティブに近い発音のリズムをつかみつつ、実用的な文法やボキャブラリーを同時に鍛えていけるようなトレーニングを提案していく。まずはその第一歩として音読トレーニングについて解説しよう。
発音学習の一環として音読をするときに大切なことは、必ずお手本の音声を聞きながらやるということだ。お手本の音声を聞かずに自分の発音でひたすら音読を続けても英語を読むことになれることはできるだろう。しかし、間違ったリズムや発音に気づくことが難しく日本人的な変な発音の癖を付けてしまうことになりかねない。だから、まだネイティブの発音・リズムを完璧に身に付けていないうちは、お手本の音声を聞いてその発音、イントネーション、アクセントを徹底的に真似ることが上達の鍵となる。
そしてもうひとつ大切なことは、音読素材の選び方だ。実は音読のもたらす効果のひとつに、繰り返し繰り返し同じ文章を音読練習することによって、その文章が体に染み付く、すなわち脳が自然に覚えてしまうということが上げられる。音読をすることによって、その文章を視覚から捉え、自分の口で発声し、さらにその音を聴覚からも同時に捉えることができる。そしてこの視覚でインプットしたものを発声により同時にアウトプットし、さらに聴覚から同時にインプットするという3器官の同時運動によってとらえられる文章の記憶定着度はこれらどれかひとつのみを使って行う場合よりも格段に高いのは明らかである。だから、適当なものを単に音読するのではなく、自分のレベルや目的にあった音読素材を選べば、発音の向上とともに文法運用能力やボキャブラリーの蓄積が期待できるのである。ここでは各素材別に期待できる効果等について解説していこう。
当サイトのアドバイスどおりに発音学習を最初に始めた英語学習者は、もしかしたらここまでの英語学習で文法知識はなにもないかもしれない。しかし安心して欲しい。実は英語を話せるかどうかに文法知識は全くといっていいほど関係しない。英語を話すのに必要なのはテストが解ける文法の知識ではなく、繰り返しによる慣れから来る何も考えずに無意識に使える文法の運用能力なのだ。極端な話、例えば3単原という文法用語があるが、“〜は知らない”と英語で言うときに“I”なら“don’t”が来て“I don’t know.”,“she”なら3単原の“doesn’t”がきて“She doesn’t know.”が正しいという文法知識があるかどうかではなく、“She”と言った時点で“doesn’t”が口から自然に零れ落ちてくるかどうかということがしゃべれるということだ。今までの繰り返しの経験から“she”と“doesn’t”が勝手に反応して出てきてしまうということだ。だからもし“she don’t know.”を聞いたら、これはおかしいなとすぐに直感する感覚を合わせ持つ。なぜならあなたの脳が経験的に“she don’t”という音を知らないからだ。もっとも黒人英語などでは“she don’t know.”も普通に使われていて、彼らにとってはこれも正しい英語となる。なぜならこれが使っている彼らにとっては経験から染み付いている、とっさに無意識に反応する形であるからだ。
今の話は少しわかりにくかったかもしれないが、よくいわれる例にこんなものがある。それは日本人英語学習者は、文法知識が豊富で、読み書きがよくでき比較的高度な英語テストでも高い点数を取るが、文法知識も乏しくそういったテストがほとんどできないヨーロッパ人達に比べてもリスニングやスピーキング力がはるかに劣るということだ。もちろんこれはステレオタイプ(典型)であって一概には言えないが、ようするに典型的な日本人英語学習者は沢山の文法知識を持っているだけでそれを運用してしゃべることがほとんどできないということだ。それに比べてヨーロッパ人は少ない文法知識を使ってペラペラしゃべることができる。彼らにとって文法とは単なる知識ではなく繰り返し使うことによって、無意識に確実に運用できる道具となっているのだろう。日本人は“文法の知識が豊富”→“間違いを恐れてこれから言うことが正しいかを考えてしまう”→“口数が少ない”→“いつまでたっても無意識に使える文法が身につかない”という悪循環に陥っているのに対し、ヨーロッパ人は“文法知識が少ない”→“ミスを恐れる必要がない”→“知っている文法を確実に運用して口数が非常に多い”→“繰り返しによって無意識の運用能力を身に付ける”という理想的なステップを踏んでいるといえる。これは自己主張が強く口数が非常に強い欧米人と、言いたいことを躊躇してあまりしゃべらない日本人という国民性の違いにまで現れているようにも思えるのは気のせいだろうか。
だからもう一度言うが、英語をペラペラしゃべれるかどうかに文法知識はあまり関係ない。繰り返しからくる無意識の運用能力が鍵を握るのだ。そしてこの無意識の運用能力を手に入れるひとつの方法が音読なのだ。だからここではまず音読の素材に、使える形の文法事項を整理して詰め込んだ例文集のようなものを選ぶことをおススメする。幸い近年の英語学習業界ではこの使える英文法という形が注目され始めていて、これようの教材もいくつか出版されている。スピーキングに必要な簡単な文法の形を含んだ短文を繰り返し繰り返し、覚えてしまうほどに声に出して読むことで、正しい文法の形を使える形で体に染み付けようというのだ。
ただここでは、単なる音読ではなく発展的な音読方法を提案したい。実は繰り返し読むことによって脳に染み付けるということがよく言われるが、これは実際には、少しでも楽に英語を身に付けようという意思が生み出した非常に非効率的な理論なのである。時間の浪費といってもよい。何度も何度も覚えるまで読むなど、気の遠くなるほどの回数ではないか?しかし、この脳に染み付くまでの時間を極端に短縮する方法がある。それは単なる音読ではなく“頭で考えながら”する音読だ。よく音読で言われるのは、繰り返し声に出して読むことで、自然にその文章が頭に残るということだが、ここでは頭に残るまで繰り返すのではなく、初めからその文章を覚えてしまって頭で考えながら、文章を組み立てながら声に出して発するということである。ようするに紙の上の文章を何も考えずにただ読むのではなく、頭の中の文章を脳を使って組み立てながら読むのだ。この考えるという作業は最初は時間がかかってしまうかもしれない。しかし繰り返すことによってその考えて文を組み立てるプロセスにかかる時間は確実に短縮されていき、最終的にはあなたの発したいという意思に無意識に反応して出てくる形となる。この方法がスピーキングに必要な無意識に運用できる文法を手に入れるのに理想的なプロセスなのだ。
しかし実際に“Do you know what I’m saying?”という文章があったとしてこれを2回目に紙に書かれた文章をみずに音読しろといわれても無理な話である。この文章を完全に頭で覚えているとしても、それを引き出すのには何らかのきっかけが必要だろう。ここでそのきっかけとなってくれるのが日本語訳だ。とはいっても、英語をしゃべるときにはなるべく日本語を介さないで考えるのが理想的である。だからあくまでも日本語訳は覚えている文を頭から引き出すきっかけ程度に使おう。決して日本語文を細部まで読んでそれを正確に英語に訳そうなどとしてはいけない。“私の言っていることがわかりますか?”という文が放つ雰囲気や、長さをぱっとみて、ああ、あの文だなと“Do you know what I’m saying?”がでてくるのが理想である。
そして日本語を介さないでの英語文を英語のままで考えて発するのに最も効果的な方法が、自分でその情景を表す記号のような絵を描いてみることである。例えば上の例では、棒人間を二人並べて、一人の頭の上にはてなマークをつければ十分だろう。そして二回目に暗唱するときにはこの絵をきっかけにして頭から文を引き出す。他の人にはなんの絵かわからなくても、文を声に発しながら自分で書いたイラストなら、自分では何を意味するかわかるだろう。そしてこんなイラストを描くには3秒とかからない。この方法一見ばからしく思えるかもしれないが、これをやることで言語を右脳のイメージと直結させることができ、普通に日本語訳を見て暗唱するよりも100倍も効果的な方法なのだ。言語をしゃべるということは右脳で感じたことをいかに言葉に直結させて発するかという点がキーポイントとなってくるので是非試してみていただきたい。
またこのあとのステップでも解説する事になるが、お手本となる音声教材のすぐ後に続いてリピーティングすることも効果的である。直前に答えとなる音声が発せられているので、何も見ずに日本語文のきっかけから文を発するよりは頭を使う度数は下がるが、それでも直前に聞いた音声をきっかけに自分で文を組み立てなおさなくてはいけないので記憶定着にやや効果的ではある。音読では、書いてある文章をただ見て声に出すのではなく、なるべく頭で考えながら声を発する工夫をすることが大切だ。ただ本当に発音矯正だけが目的であるなら、ひたすら目で見た文章を音読し続けるという方法にも一理ある
少し解説が文章を定着させる方法にそれてしまったので、音読の素材に戻そう。初めに実践的な文法要素の詰まった例文集を挙げたが、二つ目には日常的な簡単なボキャブラリーを含む単語集などの例文音読をおススメする。これらの例文には、日常会話に必要な文法事項などももちろん含まれているし、同時にそのボキャブラリーを定着させることもできる。さらに日常表現集的なものは、その音声教材がよりネイティブの自然なしゃべりに近いことが多い。また発音矯正を目的として特におススメなのが、スラング表現集の音声教材だ。スラングというのは日常のもっとも自然なレベルで多用されるボキャブラリーであるから、そのしゃべり方も最もくだけた生のネイティブ会話に近いはずである。
次に上げられる音読素材は、各種リスニング教材だ。リスニング学習教材として手に入るものはほんとに多種多様で、目的によってさまざまなものが使い分けられる。日常会話程度の平易で短く自然な音声から、多少学問的な講義、小説の朗読や小論文の朗読といった高度なボキャブラリーを含む長文音声までさまざまだ。そしてこれらの特徴が音声教材とそのスクリプトが一緒に手に入るということである。自分の目的、レベルにあった形でいろいろ吟味してみたい。
最後にスクリプト(原稿)が手に入るメディア全てに音読題材を広げられる。ニュース原稿やインタビューの言葉を書き下ろしたウェブサイトは探せば山ほどあるし、映画やTVの台本も簡単に手に入れることができる。特に映画や海外ドラマはDVDを借りるだけで必ず英語字幕がついているからかなり学習しやすい。自分がこの人のようにしゃべりたいという俳優・女優を見つけて、その人の出演作品のDVDの字幕をひたすら音読するのも手だろう。次の『アクティング(演技)』のステップでも解説するが、DVDでする音読トレーニングには感情移入もしやすい。 自分なりにいろいろな工夫をしていろいろな音読方法に挑戦してみよう! |
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